第31章 暗闇
リエについて入った家は、なんだか、冷え冷えとしているようにヒナタは感じた。
以前は、家に入るとなんだか気持が温かくなるような、そんな雰囲気があった。
この家でリエちゃんに迎え入れられたら、うちはくんも一日の疲れが吹き飛んでしまうだろうなぁ、なんて思ったくらいなのに。
リエがお湯を沸かしている間、沈黙が続いていた。
ヒナタは何か言わなければと思うものの、もともと率先して話すタイプではない上に、今のリエになんと声をかければいいのか、わからなかったのだ。
リエと一緒にいて、こんなに気まずいことは一度としてなかった。
それは、いつもリエが場の雰囲気をつくってくれていたからだ。
本当に自分はリエに頼り切りだったんだと自覚して、ヒナタは情け無く思う。
自分は、今までリエに何かしてあげられたことがあっただろうか。
「…ヒナタ、今日はどうしたの?」
そう声をかけられ、ヒナタは慌てて顔を上げる。
目の前にはすでに湯気のたったお茶が置かれていた。
「えっ…あ……リエちゃん、どうしてるかなって……思って……」
いつも真っ直ぐ見つめてくれる笑顔はそこにない。
初めて見る無表情のリエを前にすると、なぜか語尾が小さくなってしまった。
「その……キバくんとナルトくんのお見舞いに行ったら…リエちゃんが病院からいなくなったって聞いたから…その…心配で…」
どう言えばいいのかわからなかった。
自分の不要な一言で、もしリエがこれ以上傷ついてしまうことがあったらと怖かったのだ。