第31章 暗闇
「……リエの無事を確認しに来ただけだからもう帰るけど。…耳、ちゃんと消毒してつけかえなさいね。ばい菌入ったら後が大変だから」
ピクリと体を震わしたリエに笑いかけ、カカシは彼女の家を後にした。
神獣がついているから変なことはしないとは思うものの、やはり気になってしまったカカシは、こっそり彼女を見守ることにした。
今のリエはまるで人形のようだ。
感情もなく、ほとんど言葉も発しない。
生気がまるでないのだ。
((ま…わからなくもないけどね))
目の前で母を失い、幼いうちに愛する父を失い、
それからすぐに世話になっていたうちは家を慕っていたイタチに滅ぼされ、
そして今度は恋人のサスケが、自分から離れて行った。
三代目から、お互い身寄りのないサスケとリエが一緒に暮らしているということは聞いていた。
恋人云々の前に、お互いただ一人の家族だったはずだ。
((本当に馬鹿だよ、サスケ))
あんなに可愛らしい愛しい人を傷つけてまで復讐に生きて、お前に何が残るというのか。
その選択がお前を想う者にどんな思いをさせるのか、今後の彼女の人生にどれだけ影響を及ぼすのか、なぜ気付かないんだ。
なぜ自分から幸せを手放した?
自分は幸せを望んでも、全てがこの手からこぼれていったというのに。