第31章 暗闇
「勝手に病院抜け出したら心配するでしょ」
「……すみません」
そう言って頭を下げるリエのサラリと流れた髪の間から覗く右耳の紅いピアスに気づき、カカシは気付かれないようため息を吐く。
あれは中忍試験が終わった頃からサスケがつけていたピアスだったはず。
そういった類に興味がなさそうなサスケがしていたことでカカシはよく覚えていたし、その件で彼をからかったこともある。
その片方を今、リエがしている。
別れの際にサスケがリエに渡したのだろうと推測するのは容易い。
リエがわざわざそれを右耳に付けているのが、サスケが右耳にしていたからだとしたら…。
二人がわかっているのかは定かではないが、片耳のみのピアスには意味があるという。
右には“守られるもの”
左は“守るもの”
((サスケは一体、何を考えているんだ))
置いていくのなら、とことん突き放してやればよかったのだ。
それならば、時間はかかるだろうが想いの切り替えも効くだろうに。
そうすればいつかサスケ以外の者が…
例えば自分でも、きっと彼女を幸せにすることだって出来るはずなのに。
リエの幸せを願うのならば、なぜ下手に期待を持たせるようなことをするのだと、カカシは胸の内でサスケに毒づいた。