第31章 暗闇
サクラはナルトの病室で、サスケが一人で行ってしまったことを聞いた。
ショックで、力が抜けた。
けれど、傷だらけで、それでも「必ずサスケを連れ戻す」と笑うナルトを見て、私も強くならなければと思った。
カカシにサスケを追いかけたリエのことを尋ねると、怪我はないものの入院していると聞き、サクラは教えてもらった病室へと向かっていた。
と、そこへ。
「……リエ?」
ふらふらと裸足のまま廊下を歩いて来るリエに出くわし、サクラが声をかける。
しかしリエは瞳をサクラに向けることもなく、おぼつかない足取りのままサクラの横を通り過ぎていく。
((…気付いて…ないの?))
虚ろな瞳のリエからは生気が全く感じられなくて、サクラは驚きその場に立ち尽くしてしまった。
いつもの明るく華のように笑うリエの面影は、どこからも見受けられない。
((リエ…))
彼女の弱々しい後姿を見つめ、サクラは痛感した。
サスケがいなくなって誰より辛い思いをしているのは、自分でも、ナルトでもない。
サスケを愛し、サスケに誰よりも愛されていた、リエなのだということを。
「…サスケくん…リエっ…!」
サクラの瞳から、涙が溢れる。
サスケのことが本当に好きだった。
でも、リエが相手なら、この気持ちも諦められると思っていた。
それほど二人はお似合いで、自然体で。
敵わないと思った。
二人には、幸せになってほしかった。
サスケのことはもちろん、リエのことも大好きだったから。
二人にはずっと、笑っていてほしかったのに。