第30章 涙雨
サスケの目を見て、リエは悟った。
もう自分が何を言っても、どんなに縋っても、彼は言動を覆さない。
もう、隣で笑い合うことは、出来ないのだと。
「……サスケは昔から…一度決めたら……曲げない、もんね……」
昔から、サスケの一人で抱え込んでしまう性格が心配で
自分勝手な振る舞いに振り回されて大変だったりもしたけれど
でも…彼のその意思の強さも、好きだった。
「ねぇ、もし……もし私がサスケの復讐を応援してたら…サスケは私を置いて行こうとしなかった…?」
ふと、思ったことを聞いてみる。
もしも彼の恨んでいる相手がイタチじゃなくて、一緒に復讐をしようと誓っていたのなら…サスケは、共に行かせてくれただろうか。
「…そんなことお前は嘘でも出来やしないだろ」
しかしサスケはそう返してきた。
もしもの話なんてしても仕方がない、という様に。
今のこの現実は変えようがないことなのだと、突きつけられた気がした。
「……そう、だね。私はサスケとイタチと、いつかまた三人で笑える日がきっと来るって…夢みたいなことずっと思ってた。
……こんなに苦しくて悲しい、今この瞬間も……ホント、馬鹿だよね…」
涙まみれの顔で、リエは微笑んだ。
彼の気持ちが変わらないのならば、せめて見送ってあげようと思った。
彼が好きだと言ってくれた笑顔で。
でもなぜだろう。
泣かないようにしようと思えば思うほど、意に反して涙が溢れてくる。
「もう、止めない、から……これだけは約束して」
サスケを強く抱きしめ、リエは言った。
「絶対に…死なないで……」
答える代わりに、サスケはギュッと抱きしめ返してくれた。
この温もりを忘れないように。
優しく、そして強く。
次に会うとき、お互いどんな道にいるかわからない。
それでもきっと、お互いを思う気持ちだけは変わらない。
そんな想いを、確かめ合うようにーーー