第30章 涙雨
((…………ダメだ))
やはり自分は、リエにだけは非情になれない。
里も、仲間も、捨ててきた。
繋がりを断ち切れた。
でも、リエだけは違う。
たとえどんなに呪われた道を行こうとも、たったひとつ、自分をこの世界に繋ぎ止めるもの。
それが、リエなんだ。
オレが力を求める理由も、オレが存在する理由も、リエをただ、守りたいが為。
いくら冷たくするのがこれからのリエの為だとしても、リエを大切に出来なければ自分の存在意義すらなくなる…そんな気がした。
里抜けの決心は変わらない。
リエと共に行くことも出来ない。
けれども、リエを思う気持ちはだけは、ちゃんと伝えておこうと思った。
そのことが、自分の言葉が、リエをこの先縛り付けようとも。
……むしろ、本当はそれを望んでいたのかもしれない。
リエの幸せを願ったのは本心だ。
けれど、それが他の男の隣にあるものだったら、きっと耐えられない。
本当に自分勝手だな、と思わず自嘲した。
サスケはここにきてようやく振り向き、リエを見た。
俯き涙を流すリエの顎に手をかけ、そっと彼女に口付ける。
数えられないほどしてきたキスが、初めて涙と雨の悲しい味がした。
唇を離し、自分の右耳につけていたピアスを外すと、リエの手に握らせる。
それは中忍選抜試験の後、リエがプレゼントしてくれたものだ。
「お前を愛している。この世の誰よりも。この先も、この気持ちは変わらない。けど…もう、決めたことだから…この里を出るオレの意思は変わらない。傷つけて、本当にごめん。でも目的を成したら必ず、お前の元へ戻るから……だから……」
今は、行かせてくれーーー