第30章 涙雨
ナルトとの激しい戦いが終わった。
サスケの額につけられた額当ての結び目がシュルリと解け、倒れたナルトの頭の横にカランと音をたてて落ちる。
額当ての木の葉のマークは、ナルトの攻撃によって傷跡がつけられていた。
木の葉を引き裂くそれは、皮肉にも”抜け忍”の象徴だ。
悲しむように、空が泣きだした。
「…ぐっ!?」
首の呪印が急に痛み出し、地に膝をつく。
意識のないナルトの顔が近くにあった。
ザァザァと、雨が打つ。
しばらく、そのまま動けなかった。
イタチがナルトを狙っていた理由が、ようやくわかった。
きっとそれは、ナルトが戦いの最中で見せた未知の力の存在。
得体の知れない、とてつもない力を秘めていたナルト。
それが一体何なのか正体はわからないけれど。
でも、その”力”よりも、呪印を解放した自分の方が強かった。
この力を極めればきっと…いや、必ず、アイツより強くなれる。
その確信に繋がった。
自分を”友”だといい、全力で止めようとしたナルト。
ナルトを”友”だといい、全力で殺そうとした自分。
ナルトはいつの間にか、自分にとっても、”最も親しい友”になっていた。
うちは一族の”万華鏡写輪眼”は、最も親しい友を殺すことで手に入るーーーー
あの満月の晩、あいつが、そう言っていた。
だから、結局ナルトを殺すことはしなかった。
あいつの言いなりになってたまるか、と思ったから。
でも……
ナルトに、友達だと言われて
自分を兄弟のような感じに思っていたと言われて
なんとも思わなかったといえば、嘘になる。
それでも、ナルトの言う”繋がり”を断ち切ってでも、やらなければならないことがあるのだ。
殺さなければならない仇がいる。
守らなければならない大切な人がいる。
その為ならば、捨てられる。
仲間など、友達などいらない。
力があれば、それでいい。
そう……それで、いいんだ。