第30章 涙雨
【……見つけた。今は足を止めているようだが、いつ発つともわからぬなら汝の足では追いつけぬ距離だろうな。仕方ない。振り落としても責任は取らぬぞ】
そう言い、風牙はくいと自分の背を示した。
乗れ、ということだろう。
「…ありがとう風牙」
風牙の速さは風そのものだった。
まるで木々の方が避けていくような感覚を覚える。
風牙の背中で、リエはサスケのことを考えていた。
サスケの心にいくら苛立ちや怒りがあったとしても、前触れもなく里を出て行くはずがない。
きっと彼の元に、大蛇丸か、その配下が来たのだ。
サスケから離れるんじゃなかった。
どんなに拒絶されても、一人にするんじゃなかった。
……嫌な予感はしていた。
でも、サスケからは直接何も聞いてはいない。
それともあの触れ合いが、別れの挨拶だったとでも言うのだろうか?
それでも、黙って行ってしまうなんて、自分勝手すぎる。酷すぎる。
まるで……あのときのイタチのようだ。
サスケはあの写真を見て何を思っていたのだろう。
何を思って、あの言葉を残したのだろう。
なぜ悩んでること、何ひとつ言ってくれなかったのだろう。
なぜ……一人で行ってしまったのだろう。
イタチが里を抜けたときは何も出来なかった。
何も出来ずに、何も知らずに、後悔しか出来なかった。
だから今度こそ、絶対に。
サスケは必ず連れ戻す。
里抜けなんてさせない。
孤独になんか、絶対にさせない。
((サスケ…!!))