第30章 涙雨
駆けて、駆けて、駆けてーーー
ただ前だけを見つめ、走り続けた。
愛する彼の、見えない背中を追いかけて。
【何をそんなに急いでおる】
里を出て人気がなくなった頃、風が勢いよく集まり、リエと並走しながら風牙が現れた。
「風牙…そうだ、風牙ならどこの風でも感じること出来るよね?サスケがどこにいるかわかる?!」
【探し人か?居場所もわからず闇雲に走っていたのか、無駄なことを…】
「お願い風牙!サスケを探して!!」
【なんだその金切声は。落ち着け。まず、歩みを止めろ】
「立ち止まってなんかいられない!こうしてる間にもサスケは…!」
【汝の足では追いつくものも追いつかぬ。とりあえず、止まれ!】
噛みつかれるかの如く風牙に強く言われ、リエは渋々その足を止めた。
止まってみて初めて、自分が震えていることに気付いた。
恐れているのだ。
サスケを失うことを。
顔色の優れないリエを見て、風牙はため息を漏らす。
【サスケというのは、汝とよく一緒にいた小僧のことか】
「うん」
【……仕方ない。今回限りだぞ】
そう言うと、風牙は金の目を細め、クンと鼻を震わせた。
あらゆる場所に吹く風を感じ、サスケの行方を探してくれているのだ。
風使いとしてある程度風の声を聞くことは出来るようになり、中忍試験本選の前に里内にいたカカシの居場所を探し当てたリエだが、広範囲ともなるとまだまだ修行不足である。
しかし、神獣である風牙にかかれば人探しなと容易いことのようだ。
それは、さほど時間もかからなかった。