第30章 涙雨
「リエ…サスケくんが…サスケくんが、出て行っちゃった…」
「……え?」
サクラの言葉に、リエの目が大きく見開かれる。
「私、止めたんだけど、でも、無理だった。私じゃぁ……止められなかったの…!」
涙を零すサクラを見つめるリエは、現実を受け入れられない、そんな目をしていた。
ショックからか、よろめきながらとベッドから下りると、リエは徐に机の上の写真を手に取った。
「……!」
しばらくそれを眺めていたと思ったら急に体を震わせ、リエは突然窓から飛び出して行ってしまった。
サクラが慌てて窓から顔を覗かせるも、すでに彼女の姿は小さくなっていた。
一人置いていかれたサクラは、リエが見ていた写真を手に取る。
そこには、リエの隣で幸せそうに笑うサスケがいた。
自分は一度も見たことのない、優しく穏やかな笑顔。
((……サスケくん))
頭ではわかっていたことだけれど、心は正直だ。
胸が痛くて仕方ない。
これはきっと、”本当の失恋”の痛み。
リエと一緒ならこんな笑顔が自然に出来るのに
本当に幸せそうなのに
どうしてリエよりも復讐の道を選んだのか、サクラにはわからなかった。
ふいに写真を裏返すと、文字が書かれていた。
「……サスケ、くん…」
写真の隅に書かれた、サスケからリエへの”ラブレター”。
彼のリエへの想いに、涙が溢れた。
自分では駄目だったけれど、リエだったらきっと…
リエの説得があれば、きっとサスケは戻ってきてくれる。
そう信じて、サクラはただ待つしかなかった。