第30章 涙雨
ナルトは必ずサスケを連れて帰ると約束してくれた。
手術を無事終えたリーは勝手に病室を抜け出し、ナルト達の力になるべく彼らを追っていったらしい。
綱手からは、同盟国の砂の里に応援を頼んだから安心しろと言われた。
それでも、サクラの不安は消えない。
リエのことが気になりもう一度彼女の家に行くも、相変わらず反応がなかったが、試しに扉を引いてみると鍵はかかっていなかった。
「リエ…いるの?」
中に入り、しんとした室内をそっと見て回ると、ベッドの上で静かに眠るリエの姿を発見した。
「リエ…?」
体を揺すっても反応しない彼女を見て、サクラは気付く。
「…幻術にかかってる!」
サクラはチャクラを練り、リエにかけられた幻術を解いた。
ゆっくり瞼を開けたリエはゆっくりと体を起こし、キョトンとした顔でサクラを見つめた。
「…サクラちゃん?え、なんでこんなとこに…あれ、私いつの間に寝てたんだろ…」
「…リエ……」
「ど、どうしたの?大丈夫?」
今にも泣き出しそうなサクラの顔を心配そうに覗く、リエのいつもと変わらぬ様子からわかる。
サスケは、リエに何も告げることなく去ったのだと。
チャクラコントロールが優れているリエは、幻術には特別弱くないはず。
そのリエが幻術にかけられていたということは、よっぽど幻術に長けた人物の術か、リエが全く警戒していなかったか、だ。
どちらにも当てはまる人物……
かけたのは間違いなくサスケだろう。
なぜそんなことをしたのか。
…そんなの、決まっている。
サスケはリエが自分を追ってこないように、彼女に幻術をかけ眠らせたのだ。
リエに止められたら、きっと気持ちが揺らいでしまうから。