第30章 涙雨
翌日の早朝……時刻は四時。
「おい、起きろ!こんなとこで寝てっと風邪ひくぞ!」
五代目火影である綱手に頼まれ荷物を運んでいる途中のイズモとコテツに声をかけられ、ベンチで寝ていたサクラは飛び起きた。
そして、すでにサスケの姿はなく、サクラの説得も虚しく里を出て行ってしまったことを悟り、涙する。
サクラから事情を聞いたイズモとコテツは、サスケが里を抜けた旨を綱手に報告した。
綱手は、今回の試験で唯一中忍となったシカマルをリーダーとし、サスケを連れ戻す任務を与えた。
上忍、中忍が任務で出払っている今、シカマルが選んだ”優秀な”下忍は
ナルト、チョウジ、ネジ、キバ。
シカマルと五人一組でサスケを連れ戻す為、里の門付近で作戦会議をし、彼らはそのまま駆けて行った。
「絶対にサスケを連れて帰る」と、リー曰く”ナイスガイポーズ”で約束してくれたナルトを信じて、サクラは彼らの後ろ姿を見送った。
溢れ出る涙を拭い、ふと、思う。
((リエは……どうしてるのかしら))
好きな人を、サスケをずっと見ていたからこそわかる。
サスケがどんなにリエを大切にしていたか。
どんなに……愛していたか。
リエもサスケと気持ちは同じことは明白で。
きっとリエだって、自分と同じように出て行くサスケを必死で止めただろうとサクラは思った。
でも、それならおかしい。
追い縋るわけでもなく、一緒に行くわけでもなく、
リエは今どこで、何を思っているのだろう。
((……もしかして、私が寝ている間にサスケくんを追い掛けて行ったのかしら?それとも……))
なんだか妙な違和感に襲われ、サクラはリエの家に向かった。
しかし、戸を叩くも返事はない。
その後里中探したが、リエを見つけることは出来なかった。