第29章 音の誘い
「サスケくんの一族のことは知ってる。でも……復讐なんて、誰も幸せにはなれない。サスケくんも……私も」
「五人でやってきた。確かに、それを自分の道と思おうとしたこともある。だがオレの心は結局、復讐を決めた。オレはお前やナルト……リエのようにはなれない」
「…サスケくんは自ら孤独になるの?
……リエを、孤独にするの?」
その言葉に、ピクリとサスケの身体が震える。
絶望の中の孤独から救ってくれたリエを、自分の勝手で傷付ける罪悪感。
リエには自分と違って、友人や仲間がたくさんいる。
気が付けば、リエの周りはいつも誰かの笑顔で溢れていた。
大丈夫、リエなら決して独りにはならない。
そう思って、その罪悪感から逃れようとしていた。
自分でもわかっていたはずなのに、他人に言われると一層それが強くなる。
「私は……!私はサスケくんが好きで好きでたまらない!
すごく好きだから…わかる。……私の入る隙なんてないくらい、サスケくんとリエが想い合っているってこと…サスケくんがリエのこと、誰より大事に想っていることも…。そのリエを置いてまで、どうして……」
サクラの突然の告白。
彼女の気持ちは知っていたのでそれ自体に驚きもしないが、その後の言葉には胸が痛んだ。
「……今のオレは、あいつの傍にいる資格なんかない」
言わなくてもいい事が思わず口をついて出た。
サクラに言い訳なんかしたって、なんにもならないのに。
「どうして…?リエは絶対、そんなこと思ってない!ずっと傍にいてほしいって思ってるに決まってる!好きな人が傍にいなくて幸せになれるはずないじゃない!リエも……私だって……」
サクラの言葉がサスケの胸に突き刺さる。
『サスケ、大好きだよ』
いつも隣にいてくれた、愛おしい彼女の柔らかい声が聞こえた気がした。