第29章 音の誘い
月明かりだけが部屋を照らしていた。
サスケは荷物の詰め終わったリュックを背負い、机に飾られた七班メンバーの集合写真を見つめ
そして伏せた。
その隣に飾ってある、波の国から帰った後、リエと恋人同士になってから二人で撮った写真を手に取る。
そこに映る自分は、自分でも信じられないほど幸せに酔った表情をしていた。
『幸せになれるチャンスを自分で潰してどうする』
カカシの言葉を思い出す度頭を過る、
”仲間達”の笑顔。
『サスケ…ずっと、傍にいてね…』
常に隣にいてくれた、リエの温もり。
しかし……
『サスケくんは必ず私を求める。力を求めてね』
大蛇丸の言葉が。
『こんなクズみたいな里にいても、お前は並の人間止まり。強くはなれねー。仲間とぬくぬく忍者ごっこじゃ、お前は腐る一方だぜ』
『ウチらと一緒に来い。そうすれば、大蛇丸様が力をくれる』
そして、先ほど自分を襲ってきた音忍の言葉が、その幸せを掻き消していく。
あの音忍四人組にさえ、手も足もでなかった。
大蛇丸がつけた呪印の力は、今の自分では制御も出来ない。
この力は音忍も持っていた。
自分だけのものではない。
自分より強いヤツなんて、まだまだたくさんいる。
『リエの優しさに甘え溺れているお前など、俺の足元にも及ばない。リエを守る力さえ、お前にはない』
あの紅い眼が、いつまでも付き纏う。
『何かを得る為には、何かを捨てなければならない』
呪印の力を解放しても敵わなかった音忍を前にして、
自分が思っていても口に出来なかった言葉をぶつけられて、
尚更、強く思った。
『お前の目的は、なんだ?』
力さえあればーーー