第28章 すれ違う心
来いよ、と顎をしゃくり、サスケはナルトと共に部屋を出て行く。
「…リエ!ねぇ二人を止めてよ!」
サクラはリエの服を掴み、必死だった。
彼女にもわかったのだ。
いつもの喧嘩では収まらないであろうことが。
「…そう、だね……」
とは言ったものの、いつものサスケであっても人前でリエの言うことを素直に聞いた試しがないのに、頭に血が上った今の彼が、果たして静止を聞いてくれるだろうか。
しかも今回は、挑発に乗った相手も引く気がない。
今のままでは、サスケの苛立ちが殺意となってナルトに向けられてもおかしくはない。
それだけは避けなければ。
リエはサスケの腕を掴み、彼を引き止めた。
「サスケ、病み上がりなんだしここで戦うこともないでしょ?ナルトくんと戦いたいならまた改めて…演習でだって出来るし」
「お前は黙っていろ!」
勢いよく振り払われた手が、行き場をなくして宙をさ迷う。
――サスケに、拒絶された。
「リエ…」
「………ごめんサクラちゃん。放っておけないし、ついて行こ」
無理やり笑顔はつくったものの、ショックを隠しきれなかった。
この些細な亀裂が、大きくなっていくような気がしてならない。
震える手をサクラに悟られないようにぎゅっと握り締めた。
サスケはただ、ナルトよりも強いという確証が欲しいのだろう。
……彼らしくもない。
ただの勝負で終わればいい。
しかし、もし、それ以上になってしまったら ……。
床に落ちてサスケにつぶされたリンゴが、これからの行く末を暗示しているように見えた。