第28章 すれ違う心
そこへ、廊下で話しているナルトの元気な声が、病室まで響いてきた。
その大きな明るい声からは、サスケが目覚めたことが嬉しくて仕方ないという気持ちが伝わってくる。
しかしそれを聞いた瞬間、サスケの表情が変わった。
扉の向こうを睨みつけるサスケの目は、イタチに向けたあの目と似ていた。
「あらリエ!来てたの」
リエの姿を見て、サクラが笑顔で声をかける。
「うん…さっき、来たところ」
「そう。今ね、リンゴ買ってきたの。サスケくん、嫌いじゃないよね?」
そう言って椅子に座ってリンゴを剥き始めるサクラに、ナルトが茶々を入れる。
そんなナルトを怒るサクラ。
いつもと同じ、微笑ましい光景に変わりない。
しかし、普段はそんなやりとりに興味なさそうにしているサスケが、今日は違った。
表情がどんどん険しくなっていく。
彼の中の苛立ちが、抑えきれない。
「出来た。はい、サスケくん」
サクラに差し出されたリンゴを、サスケは払いのけた。
彼の中の怒りが、焦燥が、敵意となってナルトに向けられたのだ。
「おいナルト。オレと今から……戦え!」
皆の視線が、サスケに向いた。
いつにないその険しい顔に、驚きを隠せない。
そして彼の目に開眼された写輪眼…
それは、彼の本気の証。
「…オレを助けたつもりか?五代目か何か知らねーが…余計なことさせやがって」
「サスケ、そんな言い方!」
思わずリエは声を上げる。
ナルトへの反発心からの言葉だろうが、その言い方はあんまりだ。
どれだけ皆が心配したか、わかっていないはずないだろうに。
しかしサスケはリエの言葉を無視して続ける。
「オレと戦いたいと言ってただろ。それとも、怖気づいたか」
「…ちょうどいいってばよ!オレもお前とやりたいと思ってたとこだ!」
売り言葉に買い言葉、ナルトも先程とは一転、険しい顔つきに変わる。
「ちょ、ちょっと二人とも……やめよ。ね?」
オロオロと二人を止めようとするサクラだが、二人とも互いを睨みあったままで彼女の言は全く聞いていない。