第28章 すれ違う心
綱手の治療が終わり、カカシは目を覚ました。
カカシも今まで目を覚まさなかったということは、サスケと同じく医療忍者がお手上げだったということだ。
しかしそれが、綱手の腕にかかればあっと言う間に治ってしまった。
目の前で見た彼女のその手腕に、すごい、としか言葉が出てこない。
綱手が新たな里長の火影になるという事実が、とてつもなく頼もしかった。
ガイが次はリーを診てくれと急かすので、会話もそこそこに綱手達が去って行くと、カカシは小さくため息を吐いて項垂れた。
「はぁ…こんなになっちゃって、情け無いね全く……。リエ、わざわざ見舞いに来てくれてありがとね」
力なく微笑むカカシは少しやつれた様に見えたが、とりあえず無事な姿にリエもホッと息をついた。
「先生、大丈夫ですか?」
リエの問いにカカシは眉を下げて笑う。
「ん、もうバッチリよ」
「よかったです。本当に」
「……何かあったんでしょ、そんな顔してるってことは。どうしたの?」
そうカカシに言われ、リエは驚いた。
そんなに心配させるような顔をしていただろうか?
自分では、笑顔でいるつもりだったのに。
「……。先生と別れてしばらくしてから先生のお宅に伺ったら、イタチがナルトくんを狙ってるって聞いちゃって。それで、サスケが……」
カカシには宿場町での出来事を話したが、今の自分の気持ちは伏せておいた。
今の自分の心中はぐちゃぐちゃだ。
サスケが心配でたまらないのに、傍にいたいと思うのに、サクラのように一心に見舞うわけでもない。
サスケを守りたい。その為に誰よりも強くなりたい。
その気持ちに偽りはないけれど。
でも…
サスケが離れていかないように
サスケの一番が自分でありたいが為に
その為に必死になっていたのではないだろうか、とも思う。
サスケの為といいつつ、結局自分のことばかり。
そんな自分が、嫌になる。
「……サスケも、さっき綱手様に診てもらって目が覚めたみたいなんです」
「…みたい、って。まだサスケと会ってないの?」
小さく頷くと、カカシは笑顔で「いっておいで」と言ってくれた。
「はい……ありがとうございます」
背中を押してくれたその気遣いが、とても有り難かった。