第28章 すれ違う心
病院のベッドに眠るカカシは顔色も悪く、辛そうに見えた。
カカシも、あれから目を覚ましていない。
今のサスケと症状が類似していることから、カカシもイタチにサスケと同じ術をかけられたのかもしれないと思った。
木ノ葉の里でも一二を争うほどの天才忍者といわれているカカシをここまでにするなんて、イタチはどこまで強くなるのだろうか。
「おや、カカシに見舞いなんて、物好きがいたもんだな」
そう声を掛けられて、リエは視線を扉の方へ移す。
悪戯な笑みを向け病室に入って来たのは、胸元に思わず目がいってしまうほどバストが大きくスタイル抜群な、気の強そうな美しい女性だった。
かなり若く見えたが、彼女が綱手だろうとすぐわかった。
彼女から溢れ出る雰囲気が、火影のそれだった。
「リエちゃんリエちゃん!サスケの奴、目覚ましたってばよ!」
彼女の後ろから顔を見せたナルトは、満面の笑みだ。
嬉しくて仕方がない、という気持ちが溢れていた。
「…ナルトくん、どうもありがとう。貴女が綱手様、ですね。サスケを治してくださって、本当にありがとうございました」
深々と頭を下げる。
本当に、心の底から感謝した。
……それなのに。
気持ち的にはリエもナルトと同じはずなのに
なぜ、ナルトのように心から笑えないのだろう。
「なぁに、たいしたことじゃないよ。それよりお前はこいつのとこにいていいのか?カカシなんかより、サスケの方が大事なんだろ?」
綱手はカカシの治療をしながら、からかい半分でそう言ったのだが。
「…カカシ先生の目が覚めてからいきます。……私は…後で、いいです」
リエの意外な返答に綱手は目を丸くする。
「サスケのことは後でいい」ではなく「私は後でいい」という言葉は、この場合は少しおかしい。
しかしリエの沈んだ表情に気付き、訳ありかと察した綱手は、あえて何も聞かなかった。