第28章 すれ違う心
それからというものの、リエは早朝病院にサスケの様子を見に行き、その後は風牙と修行するという日々を過ごした。
サスケが意識を取り戻すことはなかったが、毎日リエが祈り続けた甲斐あってか、彼の顔色が少しだけ良くなったように見えたのは、リエにとっても少しばかりの救いだった。
それから数日後、ナルトと自来也が新しい火影となる綱手を連れて戻ってきたと聞き、リエは急いで病院に向かった。
宿場町でナルトと別れる時、綱手を連れ帰ったらすぐにサスケを見てもらうと言っていたからだ。
「サスケくん!」
サスケの病室から聞こえたその声に、足を止める。
わずかに開いていた扉から見えたのは、目覚めたサスケに泣きながら抱きつくサクラの姿。
それを見て、リエは扉を開けることが出来なかった。
サクラは心からサスケを心配し、毎日サスケを見舞っていた。
彼に何も出来ないからと、サスケの傍にいなかった自分とは違う。
今ここで自分が出ていって、何をしようと言うのだろうか。
ずっと辛い思いをしていたサスケが目覚めたとき、一番に顔を見せれなかった自分が、なんと声をかければいいのだろうか。
「よかった」「心配した」「ごめんね」
どれもなんだか嘘臭く聞こえやしないかと、急に怖くなった。
扉一枚の距離が、とても遠く感じた。
居たたまれなくなって、リエは踵を返し、自宅から移されていたカカシの病室へ向かった。