第28章 すれ違う心
【守る、か。以前にもそんな甘ったれたことを言っておったな。そのつもりで修行に励むということ自体を否定するつもりはない。だが、風を操るということは、自然の摂理を壊すことでもある。集中力が何より必要だということは、もうよくわかっておるだろう。それだけの力を、その乱れた心で使えるとでも?】
「…それでも、何もしないのは嫌だ」
【相変わらず無茶を言う。今やったところで、その全てが無駄に終わるかもしれぬぞ】
「たとえすぐに結果が出なくても、努力が無駄になることなんてない」
それはガイの教えのひとつだ。
何も出来なかった頃からずっと、その言葉を励みに今までやって来た。
「ちゃんと集中する。風牙の教えを無駄にはしない。だから…どうか、お願いします」
『大切な人を、仲間を守りたい』
ずっと変わらないリエの強い思い。
本当に父親そっくりだと、頭を下げるリエを見て風牙は思った。
一筋の風がリエの髪を揺らす。
風牙が大きくため息を吐いたのかもしれない。
【まぁよい。汝がそこまで言うなら、修行をつけてやる。やりたいようにやってみるがよい。それで破滅するも、自分の選んだ道だ。いくら契約したからと言ったとて、汝がどうなろうと我の知ったことではないからな】
言葉はキツイが、結局は風牙もリエには弱いのだ。
主の浮かない顔は見るに耐えなかったのだろう。
「…ありがと、風牙……」
顔を上げたリエの表情は笑顔だったものの、なぜか今にも泣き出しそうに見えた。