第28章 すれ違う心
「風牙お願い。私に修行をつけて」
以前リエが自身の封印を解いた、空風一族の領地跡。
誰もいないこの場所でそう言葉にすると、風が集まり、神獣である風牙が姿を見せる。
その金の眼はいつもより鋭く見えた。
【何をそんなに焦っておる】
風牙は早々一言、そう言った。
リエの考えなどお見通しだとでも言わんばかりに。
【風使いの力の修行は時間がかかると言ったであろう。それは汝自身、身を以てわかっているはずだ】
「わかってる…でも…」
【試験前の修行期間で、今の汝が出来る範囲のことは教えた。今、汝がどう足掻こうと限度というものがある。無理をすれば身を滅ぼすぞ。
……汝は我の想像以上によくやっておる。焦ったところで、何にもならぬぞ】
厳しい風牙が珍しく褒めてくれたのは素直に嬉しかった。
けれど、その言葉に甘えてはいられない。
「……わかってる。私が以前よりずっと強くなったってことくらい…ちゃんと、わかってるよ。
でも今のままじゃ…私は、何も出来ない…サスケを守れない……」
イタチと会って、サスケはきっと思ったはずだ。
“何も変わっていない”、と。
そんなはずはないのに。
サスケだって、自分の成長をわかっているはずなのに。
しかし、あれだけ派手にやられてしまい、力の差を見せつけられた。
自分は無力だと思ったに違いない。
あれだけイタチに対して憎しみを抱いているサスケだ。
もしまた大蛇丸が来て声をかければ、もしかしたらサスケは………
ただ怖かった。
サスケが離れていってしまいそうで。
……いなくなってしまいそうで。