第26章 暗雲
サスケに追いついたときには、彼はもうナルト行き着けのラーメン屋・一楽の主人テウチからナルトの居場所を聞き出しているところだった。
「お前は来るな!!」
そう言って走り出すサスケを、リエはまた追いかける。
「どうして?!私だってナルトくんのこと心配だし、それに…」
あなたのことも。
そう言う前に、サスケが厳しい顔で声を張り上げる。
「アイツがいるかもしれないんだぞ!」
アイツとは、もちろんイタチのことだ。
リエの身を案じて言っているのだろうが、邪魔だから来るな、という意味も込められているのかもしれない。
サスケがイタチに復讐することを、リエが良しと思っていないと知っている彼だから。
走るサスケの腕を掴みその足を止めさせ、リエは真剣な表情で彼の漆黒の眼を見つめた。
「私を行かせたくないならサスケも行かないで。サスケが行くなら私も行く。サスケが選んで」
いつになく強気な態度に出たリエに、サスケは顔を顰め大きくため息を吐いた。
「……わかった、一緒に来い。ただし危険だと思ったらすぐ逃げろ、いいな」
「…………うん」
行かないと、そう言ってほしかった。
ナルトのことは心配だが、テウチの話ではナルトは今、”伝説の三忍”の一人と一緒にいるという。
いくらイタチといえど、そう簡単には手を出せないはずだ。
寧ろ、自分達がいる程危険は増すように思えた。
正直、あのカカシでさえ勝てなかった今のイタチに、サスケが勝てるとは到底思えない。
しかしそんなことを言ったとしても、サスケは聞く耳持たず、だろう。
((……逃げろ、か))
サスケの後ろ姿を見て、リエの胸が痛む。
いつもなら、”お前はオレが守る”と言ってくれるのに。
自分よりもイタチへの復讐を優先するということだろうか、とリエは不安になった。
イタチの存在は、彼らの間に出来た溝は、サスケの怒りと憎しみは、リエが思っているよりもずっと大きい。
こんなにサスケの近くにいるのに
ずっと傍にいるのに
愛し合っているのに
どこかリエと距離があるサスケの心。
それがとても、辛かった。