第26章 暗雲
猛スピードで駆けるサスケの背中を追いながらリエは彼に制止を求め続けたが、サスケにはリエの言葉など聞こえてはいないようだった。
イタチのこととなると他のものに目がいかなくなってしまうのは相変わらずであり、今の彼を動かしているのは憎しみという感情以外ないのだということもわかる。
もし今、サスケがイタチと会ってしまったらという不安がリエを襲う。
リエだって、本音を言えばイタチに会いたかった。
会って、元気な姿を見たい。
今はただそれだけでいい。
でもサスケは違う。
サスケは、彼を殺したいほど憎んでいるのだ。
根本的に違う、自分とサスケのイタチに対する思い。
その本質は、きっと同じなのに。
これがきっかけで、全てが悪い方へと向かってしまうような気がした。
サスケが向かったのはナルトの家だった。
サスケがナルトの家の扉を無理やり開けると、ちょうど部屋から出て来ようとしていたサクラと遭遇した。
先ほどリエと一緒に買った団子屋の手包みを持っていることから、ナルトに差し入れを持ってきたのだと思われる。
サクラもいきなりの二人の訪問、そしてただならぬ雰囲気のサスケを見て驚き目を丸くした。
本人がいないということがわかると、サスケは舌打ちをしてそのまま駆け出した。
「ちょ、ちょっとリエ、一体どうしたの?何があったの?!」
リエもその後を追いかけようとする前に、サクラに止められ事情を問われた。
サクラの疑問も不安も痛いほどわかるが、今は立ち止まってはいられない事情もある。
「ごめん、今急いでて…後で説明するから!」