第26章 暗雲
サクラはお茶を啜っていた手を止め、眉を下げた。
「うん…私、サスケくん達が戦っているとき、気絶しちゃってたから詳しくはわからないんだけど……。なんか、私を助けてくれたのも砂忍を退けたのも、ナルトだったみたい。サスケくんが助けてくれたんだと思ってお礼言ったら…本人がそう言ってたから……」
「…そう、なんだ…」
サクラの言葉で、サスケの心情がようやく理解出来た。
とてつもない力を秘めていたであろうあの我愛羅を、ナルトが退けた。
中忍試験本戦で遅れて来たサスケは、ナルトの目を見張るほどの成長をそのとき初めて目にしたのだ。
きっとサスケは、強くなったナルトに嫉妬し、そして彼が打ち倒した敵を倒せなかった自分に腹を立てているのだろう。
サスケだって、強くなっている。
そんなの誰の目から見ても明らかなのに。
「…どうして人は、人を羨むのかな。どうして…自分の良さに気付けないのかな…」
ぽつりと呟いたリエの声は、風と共に空に消えた。