第26章 暗雲
指定された茶屋へ着くと、すでにカカシが到着していた。
彼の隣にはシカマル達第十班担当上忍のアスマと、ヒナタ達第八班担当上忍の夕日紅がいて、ルーキーの担当上忍という共通点はあるものの普段の生活ではあまり見ない組み合わせに、三人で待ち合わせていたというよりは偶然出くわしたようなものだろうと推測出来た。
「カカシ。あんたが先にいるなんて珍しいな」
「……ま、たまにはな」
カカシはそう笑っていたものの、上忍達は皆店内を気にしているようだった。
リエが店の中を覗くと、誰かがさっきまでいたかのように湯気の立った茶と団子が机に置いてある。
サスケもリエの後ろから店を覗き込み、ため息を吐いた。
「…オレは納豆と甘いもんはダメだぜ」
「あ、そうなの」
そう言いながらもカカシがアスマと紅に目配せすると、二人は頷いて瞬身で消えた。
リエ達には言えない、何かがあったのだとすぐにわかる。
サスケも怪訝そうに眉を顰めていた。
「……で、何の用だ?」
サスケが問うと、カカシは頭を掻きながら笑った。
「ん~?修行と試験頑張った褒美に、たまにはお前らと茶でもしようかと思ったんだが…サスケが嫌なら仕方ないな」
また今度ね、と、にっこり笑ってヒラヒラと手を振ると、カカシも瞬身で消える。
残されたリエとサスケはお互い顔を見合わせ、渋い顔でカカシが去った場所を見つめた。
わざわざ忍鳥を使ってまで呼び出しておいて、サスケが甘い物嫌いだと聞いただけで帰るとは思えなかった。
それにあのカカシなら、これ見よがしにリエだけ誘うか、嫌がるサスケに無理やり甘いものを食べさせて楽しむか、くらいしそうなものだ。
「…何か、あったんだろうね」
「まぁそうだろうが…仮にも上忍が動いてんだ。すぐ片は付くだろ」
サスケの言うことにも一理ある。
状況が何もわからない今、一下忍が変に勘ぐっても仕方がないのだ。