第4章 「あの日」
握られている手を振り払い
彼女の喉元にクナイを向け
もらったばかりのネックレスを粉々にして
「俺が本当に優しい男だとでも思っていたのか?」
と、冷たく突き離すーーー
これから起こす行動の為にも、リエの為にも、そうしなければならない。
そう頭ではわかっているのに、どうしても、イタチの身体は動かなかった。
真っ直ぐに向けられた純真な瞳が、そうさせてくれなかった。
このネックレスも、本来ならば受け取るべきではなかった。
大切にする、などと、言ってはいけなかった。
込み上げる想いが、口をついて出るなんて。
((俺は、まだ非情になりきれないのか))
覚悟を決めたのだ。
これから何があろうと、誰に何と思われようとも、俺は俺のすべき事をすると。
イタチは決意を固めるように小さく息を吐くと、目の前のリエを引き寄せ、その小さな体を抱きすくめた。
「……イタチ……?」
リエの身体を痛いくらいに強く抱きしめ、イタチはリエの耳元でこう囁いた。
「リエ……………別れだ」
その言葉に驚いたリエが顔を上げると、目に飛び込んできたのはいつもの彼の漆黒とは違う
紅い瞳。
「イタ……チ………?」
イタチのどこか切なそうな表情を目の端に捉え、大好きなイタチの温もりの中で、
リエは意識を手放した。
このときリエが感じた嫌な予感は
父親が亡くなったと聞かされる少し前と同じ。
大切な人を失った日に感じたそれに
とてもよく、似ていたんだーーーー