第4章 「あの日」
「イタチ?これから任務なの?」
「……………」
リエの問いかけにも答えず、イタチは口を閉ざしたままリエを見つめていた。
鋭い視線がリエの瞳を射抜く。
いつも向けてくれるあの優しい笑顔は、そこにはなかった。
なぜか、妙に胸がざわついた。
その不安を取り払うように、リエは笑顔をつくる。
「出かけるなら、次いつ会えるかわからないし、今渡しちゃってもいいかな?これ、イタチにプレゼントなんだ」
片手に収まるほどの小さな袋を差し出すと、イタチは目線をそれに向け抵抗なく受け取ってくれた。
「………開けてもいいか?」
「うん、もちろん。暗部の分隊長就任おめでとう、イタチ」
袋の中から出てきたのは、男性用のネックレスであった。
加工された石が三つバランスよく配置されている、とてもシンプルだが存在感のあるものだ。
「お祝いしたいなって思って色々お店見てたら、その石見つけてね。自分でつくったからちょっと不恰好でごめんね」
「お前がつくったのか?……ありがとう。大切にする」
「本当?よかった。嬉しいなぁ」
イタチの言葉はいつものように優しいのに、彼の目は鋭いままだ。
確証はない。
ただ、彼を目の前にしていると、なぜか嫌な予感がした。
一度だけ経験のある、なんともいえない妙な胸のざわめきが止まない。
「あ、あのね。このネックレスについている石、願いが叶うっていわれてるんだって」
そう言うと、リエはネックレスを持つイタチの手をそっと握った。
「暗部の任務は特に危険なんでしょう?長いこと帰れないこともあるんだよね……。だからそのネックレスに、私の代わりにイタチの傍にいてもらいたいな、なんて思ったの。……しばらく会えなくてもイタチが寂しくならないように、イタチを守ってくれるように、願いをいっぱい込めたんだ。
…だから……どんなに遠くに行っても、絶対無事で、絶対に帰ってきてね」
イタチを見つめるリエの瞳には、不安の色が浮かんでいる。
そのことに、もちろんイタチも気付いていた。