第24章 中忍試験〜本選〜
文字通り、死に物狂いでドスはリエに戦いを挑んできた。
しかし、得意の音攻撃を封じられた彼が、風を味方につけ、カカシとサスケとの修行で実践経験と技を磨いて来たリエに勝ることはなく……
リエが満身創痍のドスの首元にクナイを当てがったところで、試験官のゲンマがリエの勝利を告げた。
「……なぜボクは…こんな生き方しか出来なかったんだ……」
クナイの冷たさから開放されたドスは、身体の力が抜けたように崩れ落ち、うわごとのようにそう呟いた。
「……あなた達は、二次試験でサクラちゃんやリーさんを傷付けた。サスケや皆を殺そうとした。巻物を奪う為でなく、過酷な状況下で自分が生き残る為でもなく、ただ人を傷付けることを楽しむ為にそうやっていたようにしか、私には見えなかった。だからこそ、私はあなた達を許せませんでした」
観客が送る盛大な拍手の中、リエはクナイを収めながら、呆然と地面の一点を見つめるドスに静かにそう言った。
「けれど……きっとあなたにはあなたの忍道があって、自分の意思を貫く為に、あのときあの行動に出たのだと…人には人の生きる理由があって、それが正しいかどうかなんて他人が決められることではないんだと……全力でぶつかって来るあなたと戦って、そう思いました。
あなたがもし、大切なものを守る為に今の自分を変えようと努力すれば……今からでも、変われると思います。あなたが理想とする、忍に」
その言葉を聞いて、ゆっくりと顔を上げたドスの濁った目に少しだけ光がさした。
「お手合わせ、ありがとうございました」
深々と頭を下げるリエを見て、ドスは皮肉を込めて笑った。
((……変わる間も無くボクはきっと消される))
大蛇丸への恐怖も怒りも、回り回って自分の中で消化されていた。
自分の未来など、とうにない。
使われるだけの、くだらない人生だったとドスは思う。
だがーーー
リエの言葉で、初めて”自分”を、認めてもらえたような気がして
少しだけ、救われた気持ちだった。