第24章 中忍試験〜本選〜
そう言い放つ彼女の瞳からは、確かに以前までなかった力が感じられた。
得体の知れないその力に、ドスは冷や汗を浮かべる。
「……っ!!」
しかし、見上げたリエの遠く向こうにいる”あの人”の姿を見つけて、ドスの意識はリエではなくそちらに向いた。
あの蛇のような鋭い目で睨まれているわけではない。
遠くに見えるあの人の口元は確かに笑っていた。
だがそれは、決して自分に向けられたものではない。
あの人の興味は今、自分の目の前にいる少女に向けられているのだ。
ここでこれ以上あの人の前で無様な姿を晒せば、確実に自分は殺されるだろう。
”彼”が役立たずに容赦しないのを、ドスはよく知っていた。
((……ボク達は試験中、サスケ君の実力を見る為の”噛ませ犬”に過ぎなかった…
わかっていた…わかっていたけれども…!))
”うちはサスケは天才だから”。
そういう理由で、あの人がうちはサスケに興味を持つのは理解も納得も出来た。
しかし、格下だと自分が侮っていた少女にまで、あの人が興味を持つなんて。
((……侮辱もいいところだ))
あの人に出会ってから、ずっと彼を慕って、どんな命令も逆らうことなくこなし、彼の役に立つ為に生きてきた。
それなのに、彼は自分を認めてくれることなどなかった。
自分など、彼の眼中にさえ、入っていない。
ボクはあの人にとって、ただの捨て駒だ。
そう認めてしまうと、恐怖を通り越して怒りが込み上げてくる。
((………ボクをなめるな……大蛇丸!!))
初めて反旗を翻したドスの怒りは、目の前のリエに向けられた。
血走った目は、本気の証。
そんなドスを見て、表情を変えることなくリエはゆっくりと戦闘態勢に入った。