第24章 中忍試験〜本選〜
彼女の手に握られているクナイを見て、ドスは思う。
((…まさか…ボクの響鳴穿が……たかがそんなもので壊せる代物では……))
しかし彼は、リエのクナイに纏う真空の刃に気付きハッとした。
その視線を受けて、リエは言葉にする。
「風遁でクナイを強化させているだけで、大したことはしていませんよ。あなたが油断していなければ、こんな簡単にはいきませんでした」
それはドスに対する皮肉だった。
真っ直ぐにドスを見据える彼女の瞳に、以前のような不安や恐怖はない。
そんなリエを見て、ドスの心には次第に怒りが込み上げてきた。
((…油断……そう、油断していただけだ。響鳴穿がなくとも、実力はボクの方が上。こんな小娘に、負けるはずがない!))
目の色を変えて、ドスはリエに襲いかかる。
しかし。
ドスがどんなに攻撃を仕掛けようと、リエはなんなくかわして見せた。
その様子には余裕さえ感じられる。
((なぜだ…?!あれだけの力の差があったはずだ…こんなこと…あるわけが…!))
戸惑いからか、ドスの攻撃の手が止まった、そのときだ。
瞬時に懐に入って来たリエの拳が、ドスの鳩尾に入った。
痛みと共にドスの身体が浮き、吹き飛ばされて壁に激突する。
これは、並の少女が出せる力ではない。
ドスの身体を吹き飛ばしたのは
リエの拳から発せられた、風だ。
「降参してください」
壁際に倒れこむドスにゆっくりと近付きながら、リエは言った。
「今のあなたでは、今の私には勝てません」
「お…お前如きに……馬鹿な……!」
「確かに、あなたの言う通り、あのときサスケがいなかったら私は…私達は、死んでいたかもしれない。あのときは特に、自分の無力さを呪いました。何も出来なかった自分が許せなかった。
あれから今日までの一ヶ月……あなたと戦うとわかっているのに、私が何もしていないと…今回も何も出来ないと、本気で思っていたんですか?そこまで私は愚かな人間だとあなたに思われていたんですか?
馬鹿にしないでください。強い思いさえあれば、人は成長出来るんです!」