第4章 「あの日」
父が亡くなったあの日、思った。
“何でもない日常”がどんなに幸せなことなのかを。
失って初めて、自分がどんなに幸せで、恵まれていたのか気づくものだと。
幸せが壊れるのを、崩れていくのを、もう見たくはなかった。
けれど“何でもない日常”がとても脆くて危ういものだと改めて思い知るその日は
また突然訪れたのだ。
青い果実 04
アカデミーが終わって、サスケから一緒に修行をしないかと珍しくお誘いがあったのだが、今日はミコトと一緒に夕食をつくる約束をしていた為、先に帰路についた。
まさか断られると思ってなかったのか、不貞腐れていたサスケの為にも美味しい料理をつくらなければと思いながら、
リエは鞄の中に入れておいた小さな袋をチェックする。
((今日は、渡せるかな?))
最近、任務が忙しいのかイタチは家にいることが少なく、中々会う機会がなくなってしまった。
出来るだけ早く渡したいと思い、常に鞄の中に入れておいたこの袋は、イタチへのプレゼントだ。
((喜んでくれるといいな))
そう思った矢先だった。
道の角を曲がったところに、忍装束を身に纏ったイタチが立っていたのだ。
あまり人が通らない道だとはいえ、暗部服で面もつけずにいることにも驚いたが、
それ以上に、ただならぬイタチのピリピリした雰囲気に驚きを隠せなかった。