第23章 強くなるために
”ならば我は戻るとするか”。
先生に修行をつけてもらいに行くと言うと、風牙はそう言った。
神聖な生物である風牙は、極力人前に姿は見せたくないらしい。
【リエ、わかっておるだろうが我のことは他言無用。どうでもよい輩にいらぬ詮索をされても面倒だからな】
「うん、言わないから大丈夫だよ」
【…仮にも我が認めたのだ、そのなんとか試験とやらで無様な姿を晒すでないぞ】
「うん、頑張るね」
【……とはいえ、何度も言っておるが、自然を統べるのは容易なことではない。その試験では空風の力はあてにしないことだな。まだ基礎中の基礎しか出来ておらぬのだ、大した戦力にはならん。それから、今のままでは使いこなせぬ故、もう少しマシな風使いになるまで我の力も貸さぬ。いきなり力の加減を間違えて命尽き果てた、ともなれば、さすがに目醒めが悪いからな】
「うん、色々心配してくれてありがとう、風牙」
【心配ではない、警告だ】
「そっか。それでもありがと。私の為を思って言ってくれてるんだもの」
【……そういうところはテルヤによく似ておるな、腹が立つわ】
そう言うと、出会ってから毎日修行に付き合ってくれていた風牙はその姿を風に変えた。
姿は見えないが、きっとどこかから見守ってくれているような気がリエはしていた。
風牙とも、大分打ち解けた。
畏まった喋り方でなくてもよい、と言い出したのは風牙の方だった。
その歩み寄りが嬉しくて、リエは彼の言う通りにしている。
契約の後に知ったことだが、彼の力を自分自身で使うのには契約者の命のエネルギーとチャクラを使うが、風牙を呼び出すこと自体には特にリスクはないらしい。
他に誰もいないときに限り気分が向けば付き合ってやる、と言っていたのは本心か照れ隠しか。
憎まれ口は相変わらずだが、なんだかんだ言っても風牙は優しかった。
父が彼を好いていた理由も、今ならとてもよくわかる。
「さぁ、時間無駄に出来ないし、早くカカシ先生のところに行って修行つけてもらわないと」
今までずっと風牙が傍にいてくれたものだから、ついつい独り言が口をついた。
少なからず寂しさを覚えたが、そうも言っていられない。
風が教えてくれた場所目指して、リエは歩みを進めた。