第22章 封印されしもの
それでも、この力は心強い。
今から自分の前に立ちはだかるのは、今までの自分よりもずっと強い者達ばかりだ。
我愛羅との戦いのときのように力を解放していなかったとはいえ、あのリーが勝てなかった音忍のドスが、リエの中忍試験最終試験の一回戦の相手で、
彼に勝てれば、ここまで勝ち残った強者に勝ち抜く力を持つ、更に強い忍達と戦うことになる。
そしていずれは、あの大蛇丸とだって戦うことになるかもしれないのだ。
彼がサスケを狙う以上、それは避けられないことだろう。
死の森ではサスケと力を合わせてなんとか戦えたが、大蛇丸の強さはあんなものではない。
殺気だけで死を意識するほど、力の差は歴然だった。
けれどだからといって逃げるわけにはいかない。
サスケを失うのは、絶対に嫌だ。
そう思って、リエは空風の力を解くことに決めた。
そして幸運なことに、神獣が力を貸してくれるという。
しかし風の声も聞こえないような今のままでは、封印していた力を戻した意味がない。
かといって、力を暴走させて昔のような悲劇を繰り返したくもない。
呪印の力に取り憑かれて残忍に人を傷付けるサスケも、傷付いて涙する仲間達も、もう見たくはないから。
大切な人達を、守りたいから。
この短い期間の中でも成長して、強くならなければ。
決意を新たに、リエは風牙を見つめた。
「風牙、私に風使いの修行をつけてください。あまり時間がないんです」
【…父親に似て遠慮のない娘だ。まぁよい、暇潰し程度に基礎くらいは見てやろう。我との契約が無意味に終わるようでは、話にならぬからな】
「よろしくお願いします」
守ることは破壊よりも難しい、そう風牙は言った。
それでもなんとかしてみせると言ったのは、他でもない自分だ。
自分の言葉に、嘘はつきたくない。
((サスケ…私、頑張るよ。あなたに追い付く為でなく、あなたを守れるくらい強くなる為に))
守りたいと言いつつ、いつもサスケに守ってもらっていた。
彼に頼ってばかりいる自分は、もう卒業しよう。
愛する人を、二度と失わない為に。