第22章 封印されしもの
そんな彼の反応に、リエは確信する。
「……父が生きていた頃にも…私達は会っていたのですね」
【…我との接触で記憶の封印も解けてきたか】
そして思う。
もしかしたら彼は、父の願いを聞き入れて、影から自分を守ってくれていたのではないか、と。
そうであれば、二次試験で起きた不可解なことにも納得がいく。
”急に人が変わったみたいに強くなった”
”まるで風を操ってるみたいだった”
記憶にはないが、大蛇丸の部下のザクと戦ったリエを見ていたサクラはそう言っていた。
((サスケのように何か別の力に支配されたんじゃないかって不安になったけど……きっと、彼が私に力を貸してくれていたんだね))
意識が戻ったときにチャクラと体力が尽きかけていた理由も、先に彼が述べた通りだろう。
「ありがとう」
たとえリエの考えが真実でも、彼はそれを否定するような気がした。
だから、礼を言うだけに留める。
そして、真っ直ぐに彼の目を見つめて、こう告げた。
「あなたの名前は、風牙です」
【……それは汝の父親が呼んでいた名だ】
「わかっています。だからこそ、私もあなたをそう呼びたい。そう決めました」
父が彼を心から信頼していたように
彼が憎まれ口を叩きながらも父を認め、好いていたように
いつか自分もそんな関係になりたいと、リエは思ったのだ。
出会ってから初めて笑顔を見せたリエに、神獣も目を細め嫌味のない笑顔を返した。
【…汝がテルヤのようにならぬことを、祈るばかりだ】
リエ達を取り巻いていた強風が、二人の空気に影響されたかのように柔らかい風に変わっていく。
【我、名を風牙。血の契約の元、汝に我が力を貸し与えん】
神獣…いや、風牙がそう言い終えると、地面から溢れていた光と風が、リエの身体に吸い込まれるように消えていった。