第22章 封印されしもの
驚きはしたものの、リエは正直、ホッとしていた。
彼の力を使えばすぐ死んでしまう、と言われたら、さすがに断らなければいけないところだった。
サスケを独り残して死ぬとわかっている力は使えないけれど、自分で加減さえしっかりしていれば、たちまちその心配はないだろう。
使う度に命を懸ける力だとしても、いつ死ぬかもわからない忍の世界では、強大な力は逆に死のリスクが少なくなる。
サスケを狙う大蛇丸が相手なら、尚更だ。
守られているだけなのは、もう嫌だ。
大切な人を失うのは、絶対に嫌だ。
今後どうするべきか、あれだけ考えて出した答えだ。
今のリエに、もう迷いなどなかった。
「気持ちは変わりません。お願いします」
【……よかろう。汝の力の封印を解くのと同時に契約を結ぶ。意識を飛ばすでないぞ】
彼がそう言うと、神獣の白の毛に入っていた黒い模様がするすると解けていき、そのままリエを囲むように円を描いた。
それは、彼を呼び出した巻物に書かれていたものと同じ、リエには読めない文字に変化していく。
【契約の血を落とせ】
その言葉に小さく頷き、リエは一呼吸おいてから自身の掌をクナイで斬りつけた。
浅く斬られたそこからはすぐに赤い血が溢れ、ポタポタと地面に落ちていく。
【……我、ここに新たなる血の契約を結ぶ】
神獣の言葉に反応したように、リエの血が染みた地面が光りを放ち始めた。
【契約者、空風リエ、風使いの末裔なり】
強い風が吹き付け、先程描かれた円を囲むように集まってくる。
風の勢いに負けじと地面を見ると、光る地に風が文字を刻む様子が伺えた。
【我の呼び名を決めろ。我は汝を血で、汝は我を名で縛るのだ。繋がりが出来ぬと契約は成り立たない】
「な、名前?…あの、あなたの本当のお名前はなんと…?」
【我に決まった名はない。契約者となる汝が決めることに意味がある。難しく考えずともよい】
唐突にそんなことを言われても、何も出て来ない。
勢いを増していく風に急かされているようで、リエが焦りを覚えた、そのとき。