第22章 封印されしもの
天国から地獄、とはまさにこのことだろうか、とリエは思う。
「……それは、どういう意味ですか?」
そう問わざるを得なかった。
まさか、時間と労力を削って手に入れたとしても、神獣の力は人間が使うと死んでしまうのだろうか。
もしそうだとしたら、絶望の淵に突き落とされた気分だ。
期待した分、落胆も大きくなるだろう。
不安気なリエを目の前に、彼は変わらぬ調子で答える。
【我の力を欲するのであれば、我と契約を交わさねばならぬのだ。風を支配するこの眼の力を貸し与える”血の契約”をな】
ギラギラと輝く黄金の眼が、リエを射抜いていた。
「血の契約?」
【そうだ。契約者の血を成分に、風使いとしての力を我が持つこの眼と少しばかり繋げるのだ。
契約者は風使いの能力を増大させ、自然の風を自由に操ることも可能なほどの力を得る。代わりに我は契約者から、使った我の力の分のチャクラと生命エネルギーを喰らう。まぁ、貸した分は返せ、ということだ。人間に無償で力を貸してやるほど、我はお人好しではないからの。
そう説明してやったにも関わらず、以前我の気紛れで力を貸し与えた風使いは、大きな力の加減が出来なかっただけか自分の持つチャクラ量を図り違えただけかは知らぬが、無駄に膨大な力を使いぽっくり逝きおった。愚か者すぎて笑えたものだ】
人の死について口を歪ませ面白そうに話す神獣に畏怖したのか、リエの額に冷や汗が滲んだ。
それに気付いたのか、彼はずいとリエに歩み寄り、鋭い牙を覗かせた。
まるで、威嚇するかのように。
【我と契約すれば膨大な力を得ることも可能だが、汝の操る風の負荷が大きければ大きいだけ、汝は命を削ることになる。最悪、命を落とすだろう。それでも、汝は我の力を欲するか】