第22章 封印されしもの
しばしの沈黙の後、神獣は口角を上げてこう口にした。
【考えもなしに大きなことを言うのは利口とは言えんな。だが、その心意気は嫌いではない。どうしても力が欲しいと言うのならば、我が力を貸してやってもよいぞ】
「…え?」
【我の力を使えば汝の力は何倍にも増幅し、風を意のままに操ることも出来よう。汝が望むことを形にすることも出来るようになるやもしれぬ。
無論、人間如きが我が神聖なる力を扱うなど普通ではあり得ぬこと。それをコントロールする為には、並外れた才能と血が滲むほどの努力と相当の時間が必要だがな】
突然の申し出に、リエは目を輝かせた。
伝説の神獣が力を貸してくれるなど、これほど心強いことがあるだろうか。
「是非、お願いしたいです!」
サスケを、皆を守る為なら、出来ることは全てやると決めた。
強くなる為の努力なら、どんなに辛くても喜んでやろう。
その思いで嬉々として返事をしたリエに対し、神獣はゆっくりと眼を細めた。
【だが警告しておこう。大きな力を得るには同等の犠牲を伴うものだ。力が大きければ大きいだけ、失うものも大きくなる。その覚悟が汝にあるか?】
睨まれているわけでもないのに、その眼光の鋭さは変わらない。
「…犠牲…とは?」
リエが恐る恐るそう尋ねてみると、彼はニヤリと笑った。
【汝の、命だ】
それは、リエの胸にズシリとのし掛かった。