第22章 封印されしもの
【娘よ、この巻物を開いたということは、力の返還を望んでおるのだな】
彼は足元にある、リエの力が封印されているという巻物を鼻で示しそう問うた。
先程同様真っ直ぐに向けられる瞳を見据え、リエは力強く答える。
「はい」
【風に乗って汝の声は聞こえておった。過去の記憶から、己の持つ真の力を知ったのであろう。力や強さを求めるのは生物として自然なこと。この世では強くなければ生きていけぬからの。
幼き力であれだけの嵐を呼び起こした娘よ、汝がテルヤ以上の器であれば、修行次第では里ひとつ壊滅させることも容易に出来るようになるだろう。まぁ、怒りの感情で毎度力を暴発させておれば、話はもっと簡単かもしれぬがな】
白虎は皮肉を込めたのか、そう言ってニヤリと笑った。
「……無益な殺生はもう、したくありません。私は、大切な人達を守りたいだけです。その為にも、強くなりたいんです」
【守る?空風の能力を使えばそれが容易に出来るとでも思うておるのか?守るとは破壊よりも難儀なことよ。元より空風の者が自然の力を使えるのも制限あってのこと。破壊のみならいざ知らず、何かを守る為の風の用途は我には思いもつかぬな。
風とて万能ではない。そして空風は風なしでは普通の忍となんら変わらぬ。この国ではどこぞの写輪眼や白眼などを持つ一族の方がよほど優れておるだろう。それらやそれら以上のものと敵対したとき、汝はその大切な者とやらをどう守り抜くつもりだ?】
「……それは……」
方法なんかわかるはずもない。
そもそもリエがこの力の存在を知ったのも、つい昨日のことなのだ。
金の眼に睨まれて、リエは一瞬たじろぐ。
一族のことも、力のことも
自分のことですら
何も知らなかった。
出来もしない、無謀なことを言っているのかもしれない。
ーーーそれでも。
「……今はまだ、わかりません。それでも私は、大切な人を、仲間を守りたい。私に空風の、風使いとしての才能の片鱗があるなら…父のように強くなれる可能性が少しでもあるのなら……
力の封印を解いてください。やれることは全てやります。皆を守る方法も、見出してみせます!」
立ち止まる訳にはいかない。