第22章 封印されしもの
纏う雰囲気からも只者ではないとは思っていた。
だが、父が彼を”相棒”と呼んでいたと聞いて、口寄せ動物なのかもしれないと一瞬でも考えていたリエにとって、それは耳を疑う言葉だった。
「………神獣って……」
お伽話の中だけにいる架空の生物。
神が造りし獣の長。
守護するものは伝説によって多種多様だが、彼は風を司っていると言った。
確かに父は風使いとしても天才だと言われていたらしいが、まさかこんな伝説の獣と行動を共にしていたとは。
「……本当、ですか?」
失礼ながら、リエは思わずそう口にしてしまった。
しかし彼は怒るわけでもなく、呆れたようにまた鼻をフンと鳴らすに留めた。
【我の存在が信じられぬか?現世には尾獣や仙人もおるし、何も驚くこともあるまい。我は奴らと違い好き好んで人前に姿を見せぬ故、存在がほとんど知られてはおらぬだけのこと。昔は風使い空風一族の守り神などと祀られておったこともあったのだがな】
リエは初めて聞く言葉に首を傾げる。
「……びじゅう?」
【なんだ、尾獣も知らぬのか。この里を九尾が襲ったのはそう昔の話でもあるまい。親友の息子が人柱力となり里を救ってくれた、などとテルヤが零しておったと記憶しておるが。
まぁよい。奴らは、我とは存在意義の異なる生物よ。さっさと本題に入るぞ】
気になる発言に対し色々質問を投げかけたかったが、彼から有無を言わせぬ雰囲気を感じ取り、リエは口を噤んだ。