第22章 封印されしもの
呼び掛けに応えたかのように、ふわりと暖かい風がリエを包む。
そして、”封”の文字の上に置いていた手が熱を持ったと感じた瞬間だった。
ぼふん、という音と共に、突然視界が煙幕に覆われた。
「な、なに…?!」
四方から風の集まりを感じたかと思うと、膨大な煙幕にすっぽりと包まれ困惑するリエの目の前に小さな風が渦巻き、
そしてそれは勢いを増し、煙幕を巻き込みながら空へ伸びて行く。
リエは強風で飛ばされないよう瞬時に足にチャクラを集め地面に吸着させたが、あまりの風の勢いに立っていられず尻餅をついてしまった。
((いったい…何が起こっているの…?))
呆然と目の前で起こっている現象を見つめるしか出来ないリエだったが
しばらくすると、風と煙幕が弾けたように飛散した。
そして開けた視界からリエの目に飛び込んで来たのは
黄金の瞳。
風でぐちゃぐちゃになった髪を整えることも忘れ、リエは吸い込まれたかのように、自分を見下ろすその鋭い金の眼を見つめた。
目を逸らすと一瞬で殺られそうなほどの圧倒的な力を感じるが、その瞳の奥は神々しい輝きを秘めている。
その金の瞳の持ち主は、白く美しい毛並を持つ、虎だった。
光の加減で銀色にも薄い水色にも見える不思議な白い毛に入っている黒い模様は、
自分の力が封印してあるという巻物の、”封”の文字の周りに書かれていた封印式に似ているようにも見える。
緑に燃える炎が尾の先で揺れているところから見ても、普通の虎でないことは一目瞭然だ。