第22章 封印されしもの
外へ出ると爽やかな風が吹いていた。
いつも何となしに感じていた風も、空風の力のことを知った今では、その感じ方もどことなく変わっている気がする。
父が消えてしまった後もすぐに目覚めることはなく、リエは夢の中でずっと考えていた。
自分の選択によって起こり得るたくさんの可能性と、未来のことを。
そして見出した、ひとつの答え。
それが正解かどうかなんてわからない。
でもきっと、そう決めたことを後悔はしないだろう。
目的地にはすでに先客がいた。
見知った顔にリエは声をかける。
「おはようございます、先生」
「リエ?おはよ。珍しいな、ここで会うなんて」
「そうですね。先生はよくここにいらしてるんですか?」
「ん~…ま、たまにね」
その人物は第七班の担当上忍である、はたけカカシだ。
いつも集合時間に遅れて来るのはここに寄っていたからなのだろうと、このときリエは理解した。
カカシにも大切な人がいる。
きっとその人の為に戦っているのだ。
当たり前のことなのに、今まで考えたこともなかった。
二人の見つめる先にある慰霊碑には、任務で殉職した者の名が刻まれている。
今は亡き英雄達に、リエは心から祈りを捧げた。
そして顔を上げ、カカシに向き直る。
「先生、試験までの修行なのですが…私から頼んでおいて申し訳ないのですけれど、しばらく一人でやらせて頂いてもいいですか?どうしても、やらなければいけないことがあるんです」
その言にカカシは驚くこともなく、にこりと笑って「わかった」と一言。
思い返せば、波の国で二人で話したときの彼の発言からしても、カカシは封印された自分の力のことを知っていたのだろうとリエは思う。
それでも何も言わず、助けが欲しいときに手を差し伸べて、守ってくれた。
本当に、カカシは尊敬すべき師だ。
「…ありがとうございます」
もしかしたら三代目から昨日のことを聞いているのかもしれないと推測し、あえてリエも何も言わなかった。
「勝手を言ってすみません。じゃぁ…私はこれで。お先に失礼します」
ペコリと頭を下げて去るリエが視界から消えるまで、カカシはその後姿を見つめていた。
「…頑張れ、リエ」