第22章 封印されしもの
「空風の力は風そのものを操る。もちろん力の封印を解いたからといってすぐに使える代物ではないし、その力がリエにどんな影響を与えるかは父さんにはわからない。このまま空風の力を封印したままにしたって、リエは強くなれるよ。
リエが欲しかった答えになってないかもしれないけれど、どちらを選ぶべきかはリエが決めなきゃいけない。大事な選択をするときは、最良の選択を考えるんだ。どんなに時間がかかってもいい。そうやって考えぬいて自分で選んだことならば、きっと後悔はしないだろうから。
大丈夫、リエは風に愛された子だ。どちらを選んでも、風はいつでもお前を守ってくれる」
そう言うと今度は伸ばした手を戻すことなく、テルヤはリエを包み込んだ。
それは言うなれば、暖かい風のように。
「リエに大切な人が出来て良かった。その人の為に、精一杯生きなさい。父さんも母さんも、ずっとリエの幸せを祈っているよ」
「お父さん……」
触れられないとわかっていても、リエは父の背中に手を伸ばす。
しかしその手は空を切った。
今までそこにあった父の姿は、彼の笑顔を最後に消えてしまった。
生前の忙しい日々の中でも
大切な仲間を、愛する妻を失ったときも
そして、死してもなお
いつも、どんなときも娘のことを一番に考えてくれていた父に
リエは幼い頃のあの日、最後に見た父の背中にかけられなかった言葉を送る。
「…ありがとうお父さん。大好きだよ」
今し方消えてしまった父の霊魂に、届くように祈りながら。