第22章 封印されしもの
「リエが優しい子なのはわかっているよ。それがリエの良さだということもね。
でも、大切なものを守る為に敵意を向ける相手がいるのなら、相応の覚悟が必要だということは自覚しなさい。人を傷つけることや殺めることは慣れるものではないし、慣れてほしくもないけど、甘さは命取りになる。忍の世界では皆、守ることと同様に、生きることにも必死なんだ。
実戦ではその先にはもちろん、どちらかの死でしか決着がつかないかもしれない。相手が皆優しいわけじゃない。リエだって、今まで危険な目にあわなかったわけではないだろう?
厳しいことを言うようだけど、その覚悟がないなら忍はやめた方がいい。いつかはぶち当たる壁だ。誰も傷つけることのない忍になんてなれないんだ…非情なことにね。
それを目指すのは構わない。でも極端な話、暗殺の任務を嫌だという忍はいらないんだ。忍とは、そういうものだよ」
父の言葉に間違いはない。
波の国でも、中忍試験でも、危険は死と隣り合わせだった。
サスケや皆が守ってくれなければ、自分など当に死んでいてもおかしくないのだ。
波の国で再不斬と白という少年の墓を前に、カカシも言っていた。
”忍は国の道具だ”と。
あのときナルトは、そんなのは嫌だ、自分は自分の忍道を進むと言った。
自分は、あのとき何を思った?
サスケを、皆を守りたい。
その気持ちに偽りはない。けれど……
そんな娘の気持ちなど手に取ったようにわかるのだろう、テルヤは今までのピリピリとした雰囲気とは一転、とても優しい笑みを浮かべた。
これは忍の顔ではなく、父親の顔。
「リエ、父さんとの約束、覚えてるか?」
そう言われて、リエは俯いていた顔を上げる。
あの約束を忘れるはずがなかった。
自分の目標が決まった瞬間だったのだから。