第22章 封印されしもの
力が欲しい。
大事な人を守る力が。
大好きな人達の笑顔を守れる力が。
火影から渡されたあの巻物の封印式を解けば、少なくとも今よりはずっと強くなれる。
ーーーーでも。
「お父さん…私の力を封印したのは…」
三代目は”何もわからない”と言っていた。
けれどきっとーーー
「私が…一族の皆の命を……奪ってしまったからなんだよね…?」
その力で仮に大事な人を守れたとしても、関係のない人を巻き込んでしまうとしたら。
それで本当に、強くなったと言えるのだろうか。
「…それは違う。リエ、父さんが力を封印したのは、リエが誰かを傷つけたからじゃない。リエ自身を守る為だ」
真っ直ぐに向けられた父の瞳は、とても力強かった。
「父さんもそれなりに優秀だと言われていたんだけど、それでも風をコントロール出来るようになったのは中忍になってからだった。鍛錬を重ねて、知識を得て、風を細部まで感じる術を身に付ける。そうしてやっと、風の声を聞くことが可能になるんだ。
でもリエは、その過程なしにあれだけの嵐を呼んだ。それがどんなに危険なことか、わかるかい?
それに、自分のチャクラでつくりだす風遁に比べても、自然の風を操ることは想像以上の体力とチャクラを使う。強大な力は己の身を守る盾にも、破壊する剣にもなり得るんだ」
そう父に言われて、リエは夢の中で体験したあの嵐を思い出す。
立っているのもやっとなほどの強風が吹き荒れたかと思えば、カマイタチのような鋭い刃を発生させ、次第に人や家屋を吹き飛ばすほどの威力になった。
あれだけの嵐を引き起こしたのが自分だということが未だに信じられないほどに、凄まじかった。
あの耳の奥まで届く風の轟音は、きっと忘れることはないだろう。