第22章 封印されしもの
リエの気持ちを汲んでくれたのか、テルヤは「ありがとう」と言って頭を撫でてくれた。
その手の感触はなかったが、父親の温かい大きな手を思い出して胸が熱くなる。
「…まぁそんなわけで、夢咲の力は特殊故に狙われる危険が多いんだ。特に秘伝術は、死者しか知らない情報でも夢の中で聞き出せてしまうわけだからね。だから父さんも、母さんの力のことは火影様にしか知らせていなかったし、リエが母さんの力を受け継いだことは誰にも言っていない。その力を持っているのはもうリエだけだから迂闊に口にしないこと。誰に狙われてもおかしくないからな」
それを聞き、リエはあの夢を思い出した。
母が亡くなった原因。
母を殺害したあの男は、夢咲の力を知っていたのだろうか。
「…お母さん、あのとき言ってた。”あいつの為に利用されるなんざ、まっぴらごめんだ”って。お母さんの力を知ってた誰かが、その力欲しさにお母さんを狙って来たのかな…」
「なんだって?」
「夢に見たの、あの日のこと。暗部の面をつけた男の人が”要求に従え”ってお母さんのことを脅してた」
「暗部…?なぜ…」
テルヤはリエの言に怪訝そうに顔を歪めた。
「もちろん火影様はそんな命令は出していないし、もしかしたら暗部に変化していたのかもしれないって言っていたけど…その人が抵抗したお母さんを……。
私にもお母さんと同じように夢に関する能力が少しでもあるなら、あれは私が知りたいと思っていた過去を見せてくれたんだと思うの。
お母さんは”あいつ”って言ってたし、面の男に命令をした相手のことを知っていたんじゃないかな?もし私がその秘伝術を使ってお母さんの霊魂を呼び出せれば、それが誰だかわかるんじゃ…」
ずっと犯人を探していたという父の為にも、それだけでも知ることが出来ればと思いリエはそう言った。
しかし、テルヤは静かに首を振る。
「…今のリエでは、それは無理だろう。特別な修行なしで扱えるほど簡単な術ではないからね。今お父さんがここにいるのだって、母さんの力なしじゃ成し得なかったことだ」
結局真相は闇の中。
リエは、自分の力の無さを改めて痛感した。
母にも、父にも
…サスケにも
守られているばかりで、自分は何もしてあげられない。