第22章 封印されしもの
母は川の国にひっそり暮らしていた、夢を操る能力をもつ”夢咲一族”の長の娘だったという。
夢咲一族の能力は、対象者の夢をコントロールすることから始まり、
夢を通して対象者の深層心理にまで入り込み、情報を引き出すことを主としていた。
夢の中では、術者の言葉は絶対。
どんな拷問にあおうが黙秘を貫く相手でも、術者が夢の中で命じれば素直に全てを吐くほどに。
しかも、夢の中の出来事故にどんな秘密を探ろうと本人は覚えておらず、その能力を知られることもない。
「能力や活躍が表に出ないから一般にはほとんど認知されていない一族なんだけど、どこから情報を得たのか、その能力を狙って来た賊に一族を滅ぼされたみたいでね…。もともと川の国は穏やかな国だし、戦闘に特化した人もいなかったんだって。
辛うじて逃れてきた母さんを、任務帰りだった父さんが助けたんだ。それが縁で木ノ葉隠れの里に保護して、色々あって恋に落ちて父さんと母さんは結婚したわけだが。
実は母さんには、それ以外にも特別な力があってね…」
夢咲一族では代々、長に認められた者のみに継承される秘伝術があるという。
それが、”夢幻泡影”
術者、または術者が触れている者の夢の中に、死者の霊魂を呼び寄せることが出来る術だ。
「父さん、その話を聞いたとき、”じゃあもし俺が先に死んでしまっても、お前とリエにまた会えるんだな”、なんて軽はずみに言ってしまってね。すごく怒られたよ。”あんた、リエとあたしを残して先に死ぬ気?!そんなの絶対許さないわよ”って………」
テルヤはそこで言葉を詰まらせ、天を見上げた。
愛する人を思い、込み上げる涙を堪える父の姿。
幼い頃に見ていた笑顔の裏に隠された本当の父を、やっと見つけられたような気がした。