第22章 封印されしもの
「…すまない、ちょっと感傷的になってしまったね。リエの前で母さんの話をするのが初めてだからかな」
そうテルヤは苦笑した。
「話を続けよう」
母は亡くなる直前にその秘伝術をリエに継承させたという。
万が一父が亡くなりリエが独りになってしまった場合に備えて、リエが父の言葉を本当に必要としたときにその思いに応えて夢に父が出てこられるよう、術をかけて。
『これから先、何があっても…あたしはずっと、あんたの心の中にいるからね』
夢の中で見た、母と幼い自分の姿を思い出す。
母が娘の額にキスを落としたあのときに見えた、淡い光。
あれが、父が言う”術をかけた”瞬間だったのだろうか。
「母さん、”あたし継承したはいいけどこの術ちゃんと使ったことないからどこまで効果があるかイマイチわからなくてね。あんたがいつ死ぬかわからないからそれまであたしの術が効いてるかもわからないし、あたしが消えた後でも効力あるかわからないし、そもそも触れてる状態じゃないと本来は使えない術だからリエに夢咲の能力が全くなかったとしたら発動するかもわからない”…とか言っていたけど、父さんが来れたんだからその心配は無用だったな」
「リエは夢咲の血継限界もちゃんと覚醒していたってことかな、さすが俺と母さんの娘だ」と笑う父親に、リエは先ほどから気になっていたことを言いにくそうに口にする。
「ねぇお父さん、どうしてお母さんが亡くなってからのことを、そんなに詳しく知っているの?」
母の生い立ちや能力を知っているのはわかるが、母が亡くなる直前にしたことを、なぜ父は知っているのか?
父は母の最期を見ていないはずなのに。
それに、父の口から語られる母の言葉は、母が亡くなった後の言葉のようにリエには聞こえた。
ただでさえ初めて耳にする”夢”の術。
わからないことが多すぎて、頭がパンクしそうだった。