第22章 封印されしもの
「ごめんごめん、いきなりこんなこと言ってもわからないよな。実は今父さんがここにいられるのは、母さんの力のおかげなんだ」
「お母さんの?」
母と聞いて、血に濡れながらも苦しげに笑う顔が思い浮かぶ。
記憶の封印がとけていない今、母との思い出は夢で見たあの過去だけだ。
「…その顔から察すると、もう知ってるんだな?お母さんのことも…お父さんがリエにしたことも」
父の問いかけにリエがゆっくり頷くと、テルヤは「…そうか」と小さく呟いた。
「辛い思いをしただろう?リエの力だけでなく、母さんに関しての記憶まで封印をしたのは、俺のエゴだ。…守ってやれなくて、ごめんな」
そう言って、父はその大きな手で頭を撫でてくれた。
いつも、そうしてくれていたように。
涙が出そうだった。
愛する妻を、一族の仲間を失って辛くないはずがないのに、父はいつも笑っていてくれていた。
それがどんなに大きな愛情か、リエは改めて感じていた。
「少し…お母さんのことを話そうか」
テルヤはそう言うと、亡き妻について語り出した。
どこか切なそうな表情で
でも、とても愛おしそうに。