第21章 隠された事実
窓の外をすっと指差し、三代目は口を開いた。
「見えるかのぉ?あの…丘があるところじゃ。
里の外れの一角…今では何もない土地で、ほとんど人も踏み入れぬようになったが、あそこは昔、空風一族が暮らしておった領地だったんじゃよ」
話を聞きながらリエは静かに移動し、三代目の示した方角に目を向ける。
小さく見えたそこには、不自然なほどに何もなかった。
「…一族が…いたんですね」
「少数ではあったがの。
空風一族はもともと風の能力に秀でておったが、おぬしの父親はその中でも特に優秀で、自然界の風をも自在に操れる程の才に恵まれておった。百年に一人の天才とまで言われるほどにのぉ」
いつも任務で忙しく飛び回っていて、でも出来る限りの時間を共に過ごしてくれた、優しい父親の姿をリエは思い出していた。
里の皆に慕われていたのは覚えているものの、
そんな力があったことなど、全然知らなかった。
「おぬしの父…テルヤの力のことは公にはしておらんかったが、実質テルヤのおかげで里は大災害に見舞われることもなかった。
だがしかし…十年程前、巨大な竜巻が木ノ葉を襲った。おぬしの父親程の力を持つ者が制御出来ぬ程の激しい風が里を…いや、あそこの地域だけに発生し……そして忽然と消えたのじゃ」
「……その竜巻は……やはり私が?」
「…そうじゃ。
リエの見た夢の通り、おぬしの母親は何者かによって殺害されておった。あの竜巻は、目の前で母親を奪われた怒りとショックで、おぬしの中に眠る力が暴走した結果だとされておる。
そのときの竜巻であそこら一帯の家屋などは吹き飛ばされ、おぬし達を襲った者の痕跡も残っておらん。
先程おぬしは”暗部”と言っておったが…暗部はわしの命令以外で動くことはない。もちろん、わしはそんな命は出しておらん。面だけ被って変化した可能性は大いにあるが…いかんせん、何も手掛かりがなくての。
テルヤはずっと妻を殺した者を突き止めようとしておったが、犯人も結局わからずじまい。
……誰も住まなくなったあの場所は、あれ以来ずっと更地じゃ」