第21章 隠された事実
「教えてください。私の過去を。私の忘れていることを」
神妙な顔つきで現れたリエは、火影室の大きな椅子に座る三代目火影、猿飛ヒルゼンに唐突にそう尋ねた。
案の定、三代目も驚き固まっている。
「…どうしたんじゃ、いきなり」
ただ事ではないリエの様子に、人払いの為か三代目は付き人を下げた。
それを見届けてから、リエは口を開く。
「火影様は里で起こったことの全てをご存知ですよね?私が幼い頃、何か大きな事件はありませんでしたか?例えば……すごい竜巻が里を襲った、とか…」
「………突然じゃな。なぜ急におぬしがそんなことを言い出したのか、理由を聞かせてはくれんか?」
手を組み、三代目は真っ直ぐにリエを見つめる。
その瞳からは、どこか緊張が伺えるようだった。
「…私は、亡くなった母のことを何も覚えていません。母が亡くなるまでの記憶もありません。
二歳のときに母が亡くなった…その事実だけはわかるのに、母の顔も、声も、温もりも、母が亡くなってすぐの頃から全然思い出せなくて。
それを疑問に思って、父に母のことを聞いたことはあるんです。でも、父がすごく辛そうな顔をしたから…なんだかそれ以来、母のことは聞けなくなってしまって。
私の頭が悪いから忘れちゃっただけだって、ずっとそう思うようにしていました」
母親は病気で死んだのだと聞かされてきた。
『お母さんは最期まで、リエのことを愛していたよ』
そう言った父親の寂しそうな顔は今でも忘れられないのに、母親のことはどうしても思い出せなかった。
「でも今朝ようやく母の顔を思い出しました。
夢を見たんです。幼い頃の私と母……私は夢の中で、二人を客観的に見ていました。
そこで起こった事件を見ていて、これはただの夢ではないと……自分が過去に体験したことだっんじゃないかと、思ったんです」
「……その夢の内容を…聞いてもいいかの?」
今までリエの話を黙って聞いていた三代目の瞳は、いつの間にか鋭いものに変わっていた。